2017年5月15日月曜日

今年はスイスイ! JAMSTEC(海洋研究開発機構)一般公開




毎年一年に一度公開されるJAMSTEC(海洋研究開発機構)の一般公開へ行ってきたので、レポートで紹介します。

今年はスイスイ

海洋研究開発機構(JAMSTEC・ジャムステック)は毎年5月の半ば頃一度、追浜にある横須賀本部を一般公開します。今年は2017年5月13日に公開されました。今年は強い雨も降っていたので、例年に比べれるとかなり空いていました。

海底広域研究船「かいめい」ブリッジからの景色
海底広域研究船「かいめい」
ブリッジからの景色
一般公開では研究施設だけでなく、外洋へ出て調査するための調査船の公開も行われています。その船は毎年超人気で、朝から夕方まで公開されている間はづっと列が途切れないのがいつもです。それが待ち時間無しという信じられないレベルで空いていました。

海底広域研究船「かいめい」の調理場
調理場
今年公開されていたのは海底広域研究船の「かいめい」です。2016年から使用の始まった新しい船で、海底の地形・地質・資源などを調査する船です。雨が強く一部展示出来ないところがあったので、急遽食堂なども公開したそうです。

海底広域研究船「かいめい」ブリッジ
ブリッジ
ブリッジも見てきましたが、最新の船というだけあってアナログ類の計器は少なくなっています。殆どの機器が液晶モニタになりグラスコックピット化されています。船・飛行機・電車・車と、グラスコックピットはトレンドですね。

電気を食べる生き物

研究の内容などが貼りだされているのですが、今回面白かったのが電気を食べる微生物を探しているという物です。熱水噴出孔という、海底から温水などが勢いよく噴き出している場所があります。熱水噴出孔では安定した電位差が発生しています。熱水噴出孔の噴出物には波がありますが、その電位差は比較的安定しているそうです。そこでその電位差を利用して生きる、言い方を変えると食べている微生物がいるのではないかと探しているそうです。

生き物の活動には電気が密接にかかわっています。植物は太陽光を電気エネルギーに変換し二酸化炭素と水から糖を作り出します。私たちのような動物は糖を二酸化炭素と水に分解しながら電気エネルギーへ変換し利用しています。そう考えると突飛とも言えないように思えます。

生物電池と様々な応用の可能性

まだそのような微生物は見つかっていませんが、もし見つかったら私たちの暮らしを豊かにする可能性を秘めています。微生物を利用してエタノールを作ったり、微生物を利用して何かを生産するというは今も行われています。しかし、純粋にエタノールのみを作るということは出来ず、どうしても余分なものも発生してしまいます。

そこで電気を食べる微生物から取り出したDNAを組み込むなどして、効率を上げ更に余分なものを生産しないようにすることも考えられます。そして電気を排出することの出来る微生物はすでにいるので、電気を食べる微生物と組み合わせれば、微生物を利用した電池も夢ではないかもしれません。

生命起源にもつながる

電気を食べる微生物から少し離れますが、この研究では関連して生命起源の謎のヒントに繋がる可能性があります。

生命の起源となった物質はDNAやRNAを持たず、脂質二重膜つまりは油の泡の中で化学反応が起こっていたようなものという説があります。熱水噴出孔はマグマが固まったような岩から熱水が噴き出すところです。岩は中に小さな気泡のような空洞が沢山ある構造になっています。つまり、この小さな穴が今まで考えられていた脂質二重膜の代わりを果たせる可能性があります。さらに電位差が常に発生して上に、熱水と一緒に様々な物質が噴出しています。小さな穴の中で化学反応が持続して起こっても不思議ではない環境が整っています。なので電気を食べる微生物を探す過程で、遠い昔起こっていたことのヒントも見つかるかもしれません。

チムニーの輪切り
チムニーの輪切り
これはチムニーと呼ばれる熱水噴出孔から出た物質が急激に冷やされて出来たもの輪切りです。写真の状態でも臭いをかぐと温泉のような硫黄の臭いがします。それだけ様々な物が含まれているんですね。

頑張れミミズロボット

チューブの中に入っているのがみみずロボットで、これは人工筋肉を利用してみみずのように地面を潜って土を食べて鉱物資源を採取するために開発中のロボットです。

ミミズロボット
チューブの中にあるのが
ミミズロボット
海底にはレアメタルが沢山埋まっていますが、あまりコストをかけて採取しては採算割れのため商業化出来ません。そこで考案されたのがこのみみずロボットです。構想としては海に沢山のみみずロボットを投入し海底につくと、みみずロボットが穴を土に潜ります。そしてレアメタルが埋まっているとこまでたどり着くと、その土をお腹の中に入れたまま重りを切り離して浮上します。その浮上してきたみみずロボットから土を取り出し、その土からレアメタルを採取するという計画です。

現在はボディをまず作る最初の段階で、これを実際に海に沈めて機能するかまず確かめる予定です。この最初の段階をクリアできなければ計画はおじゃんということで、大変なそうです。更に最初の計画がクリアできても「泥の採取・複数のロボットの制御・位置を認識しレアメタルのところまで向かう」などなど、課題は山積みです。

率直に言って実現のハードルは高く厳しいよう感じますが、小型のロボットを複数利用していくという発想は今後増えていくと思います。その中でも海底で資源を採取するというのは、日本に必要かつ面白いものだと思います。なので開発されている方には本当に頑張って実現して頂きたいものです。

ギガントペルタ・イージス!!

「ギガントペルタ・イージス」 ガンダムとかに出てきそうな凄い名前ですが、貝の名前です。貝の分類の公演もやっていてなかなか興味深いもので、その時に出てきたのギガントペルタ・イージスです。後々触れますが、鉄の殻を持つ名前に劣らず凄いやつです。

貝は貝殻を持っています。ということで普通は形から分類という発想になると思いますが、収斂進化のような実は違う仲間の貝だけど生息地に適応していくうちに同じような形になっちゃったということがおきます。なので見た目だけってのはやっぱり良くないんですね。

そして今だとDNAで調べるなんていうのが思い浮かぶと思いますが、この方法は大雑把なグループ分けでは非常に優秀な方法です。ただ、進化のスピードは種や環境によって違うことや、微妙な差などについて調べる時には万能ではありません。

そこで注目されるのが巻貝で言えば「歯舌」と呼ばれる人間で言う歯や、浮遊生活などを行う小さな頃に出来る貝殻が名残として残って出来たものの「胎殻」、文字通り殻に蓋をするための「貝蓋」などで分類できます。二枚貝には「歯舌」や「貝蓋」が無いので、貝殻同士をつなぐ「靭帯」や「蝶番」、俗に言う貝柱のことは閉殻筋とも呼ぶのですが閉殻筋が貝殻に付着した跡の「閉殻筋痕」での分類が重要になってきます。

ギガントペルタはスケーリーフットの親戚

先ほど貝の分類は見た目だけじゃダメという話をしましたが、近年ではX線を使って精密に透視することでも分類が可能になっています。X線と言っても病院にあるCTスキャンのようなものではだめで、播磨の理研にある「Spring-8」や筑波のKEKにあるような粒子加速器から発生するX線を利用した高性能な物が必要です。それらで透視すると貝の内臓の位置までもが正確に分かるのですが、そこから面白いことが分かってきました。

鉄の鱗を持つ巻貝として一躍有名になったスケ―リーフットですが、2015年には鉄の貝殻をもつ近縁種のギガントペルタ・イージスという種類が見つかりました。どちらも海底の似たような場所に住み、体内に共生細菌(微生物)を飼うことで熱水噴出孔から出る硫化水素をエネルギーに変換して生きています。そしてスケ―リーフットは足の部分に硫化鉄の鱗を持ち、ギガントペルタは貝殻が酸化鉄でおおわれているという興味深い姿をしています。

どちらも一見似たような性質を持ちますが、両者を透視すると内臓などの配置は違うものとなっていて、ギガントペルタは共生細菌を持たない近縁種に近い構造をとり、共生菌の生息する場所も異なるとこになっていたそうです。

いろいろ分かってきたスケ―リーフット

発見当初は謎だらけだったスケ―リーフットも、少しづつ真の姿が見えてきました。

スケ―リーフットの鉄の鱗の起源ですが、これは触手が起源ではないかと予想してるそうです。ホタテなんかも小さな目が沢山あったりしますが、あれの変化形かもしれないということです。

そして何のために鱗が付いているかですが、カニの攻撃から身を守るためではないかとのことです。熱水噴出孔には肉食の貝やカニが居ますが、貝は主に死んだ物を食べているのに対しカニは貪欲に何でも食べるそうです。そしてカニに攻撃されたらしき傷を持つスケ―リーフットも捕獲されているので、可能性は高そうです。

二枚貝などと比べても生息地を移動しないスケ―リーフットですが、子供の頃は旅をします。これはスケーリフットに限った話ではないのですが、貝は生まれたばかりはプランクトン状の浮遊する幼生としてしばらく生活します。この時に海流に乗って、生まれた熱水噴出孔を離れ新天地を目指します。火山が連なっているように、熱水噴出孔も連なっている場合も多く、それらを辿って範囲を広げているようです。なので、同じ海溝内などでは遺伝的にも割と均質なそうです。そして太平洋と大西洋の離れたところでも、何百万年に一度のような小さい確率で旅をして生息地を広げることもあるようです。

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