ワイヤレスイヤホンでは、コーデックと呼ばれる音を圧縮してスマホなどからイヤホンへ音声を通信する規格があります。規格によって音質が変わることや、開発元によって対応規格が変わるので、その点の事情も紹介します。
音質もまずまずだがほぼ必ず採用のSBCとAAC
まず絶対に採用されているのはSBCです。44.1khz/16bitまで対応する非可逆圧縮の規格です。
SBCはBluetoothで音声をやり取りする時に絶対に採用しなくてはいけない規格で、最も古い規格です。そのため音質は少し悪いのですが、静かな部屋で聞くなどでなければ実用上問題になることはあまりありません。外での視聴やながら使用がメインになることの多いワイヤレスのイヤホンの場合、殆どの場合このコーデックで満足できると思います。
2020年にSBCの後継規格のLC3が発表されました。SBCと同じ必須の採用規格になる予定で、今後は徐々にそちらに置き換わっていくと思われます。音質としてはAACやLDACと同程度や一部上回るところがある具合と主張しています。標準になればこの規格だけで音質面で困ることはほぼ無くなるはずで、ユーザーとしても助かります。
次によく採用されているのがAACです。44.1khz/16bitまで対応する非可逆圧縮の規格です。SBCより新しい規格で、音質もちょっとだけ良いです。Bluetooth以外ではYouTubeやiTunesでも採用されていて、現在最も一般的なコーデックの一つと言えます。
この二つは殆どのスマホやワイヤレスイヤホンで採用されており、ワイヤレスイヤホンでもこの二つにしか対応していないものは多いです。スマホ側は更に複数のコーデックに対応しているのが一般的ですが、iPhoneに至ってはこの二つしか対応していません。
クアルコムが開発しているaptX系
aptXはCSR社が開発したコーデックですが、現在はQualcommが買収したためクアルコムが開発するコーデックです。QualcommはスマホのCPU Snapdragonシリーズやワイヤレスイヤホンの受信やワイヤレスDACの送信用のチップも作っているため、比較的採用数は多い規格です。
aptXが基本形で、44.1khz/16bitまで対応する非可逆圧縮の規格です。AACとあまり変わらないレベルの音質の規格です。Snapdragonを採用しているスマホなら多くが対応しています。
aptXHDはその後に作られた規格で、48khz/24bitまで対応する非可逆圧縮の規格です。ハイレゾ規格に一部対応するので、音質にこだわるのなら検討対象に入る規格です。ただし、対応しているイヤホンはかなり少ないです。
そしてaptX Low Latency通称aptX LLは、音質より映像やゲームなど遅延を抑えつつ、44.1khz/16bitまで対応する非可逆圧縮の規格です。低遅延のため音ズレが小さくなるので、ゲームや映像を重視する方にお勧めの規格です。ただし、apxHD同様対応するイヤホンが少ないのが残念な点です。
以上3つを置き換える規格がaptX Adaptiveです。低遅延を実現しつつ96khz/24bitまで対応する非可逆圧縮の規格です。特徴は状況に応じてビットレートを変動させ音声品質を変えることで、電車など混線しやすいところでは音質より接続性を重視するなどが出来ます。問題は対応するイヤホンが殆どない点です。
2021年9月にはaptX Adaptiveの追加規格として、aptX Losslessが登場しました。今までのaptX Adapativeの今までの機能に加え、44.1khz/16bitまでをロスレスでBluetoothで送信できる初めて規格で今後対応機器が登場します。44.1khz/16bitがCDと同じ音質なので、CDまでなら劣化の無い音質で聞くことが出来ます。
SONYが開発したハイレゾ用のLDAC
LDACはSONYがハイレゾを最初から意識して作った規格です。96khz/24bitまで対応する非可逆圧縮の規格です。aptX Adaptiveと同様に混線しやすい状況などでは、ビットレートを変更3段階の中から選び音声品質も変動する代わりに接続性を重視する機能があります。
SONYがスマホの開発でandroid OSの開発にも関わっているため、OSレベルで標準対応している規格です。ただ、本来OSレベルで対応していても、スマホのメーカーが使えないようにしてしまったりすることもあるので、androidなら必ず対応するわけではありません。
SONYが開発した規格のためSONYの機器で採用率は高いのですが、他社の採用率は低く殆ど対応しているところはありません。
以上が現在使われている主なコーデックとなっています。現状としてはSBCとAACという必要十分なコーデックのみが採用される場合が多いです。なので音声品質に拘りたいなら、それ以上の音質のコーデックを選ぶ必要がありますが、高価なイヤホンに採用される傾向があります。どの場面で使うかを考えつつ、イヤホンの値段と合わせて検討すると良いかと思います。
また、音源がmp3の場合二重に不可逆圧縮されることになるので、スマホの容量に余裕があるのであればflacなど可逆圧縮のフォーマットの検討も合わせてしたいところです。
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